「御上先生」なぜ「官僚×教師」の設定? 誕生の背景は 脚本・詩森ろば氏が語る「リアルベース」な物語

[ 2025年3月22日 09:30 ]

日曜劇場「御上先生」御上孝(松坂桃李)(C)TBS
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 1人の若き官僚が教師として教壇に立ち、教育を改革していく――という、全く新しいテーマを持つ学園ドラマ「御上先生」が23日に最終回を迎える。TBS系日曜劇場枠で俳優・松坂桃李(36)が演じる官僚教師・御上孝がつむぐ言葉の数々が、現代人に痛烈に突き刺さっている。脚本を手掛ける詩森ろば氏に取材し、作品誕生の背景を探った。(中村 綾佳)

 19年公開映画「新聞記者」で大きな話題を集め、演劇界で数多くの話題作を手掛けてきた脚本家・詩森ろば氏が、初めて民放ゴールデン帯の連続ドラマを担当した。描いたのは、「官僚教師」という全く新しい学園もの。これまで水俣病を扱った「hg」や日航ジャンボ機墜落事故を題材にした「葬送の教室」など舞台で社会問題を多く取り上げてきた詩森氏が、影響力の大きい日曜劇場で伝えたいことは。詩森氏が脚本を手掛けるにあたり思い浮かんだのは、やはり「社会に訴えかけるテーマ」だった。

 その中で、教員免許を持つ飯田和孝プロデューサーとの話し合いを経てジャンルは「学園ドラマ」に決定した。詩森氏は「教育は人生においてもの凄く大事なこと。“教育が悪い”という指摘については私もこれまで作品に取り入れてきたし、私自身もさまざまな社会問題を取材していく中で、“これをもっと若い時に教えて欲しかった”ということがたくさんあります」と社会における教育の重要さを訴え、「教師を目指していた飯田プロデューサーが学園ドラマをご提案されたということで、これは成功させなければと、必死でやらなければと、いろいろ取材しました」とこれまでの歩みを振り返った。

 「官僚×教師」の発想は詩森氏によるもので、これまでの取材経験から思い浮かんだ。映画「新聞記者」で官僚を描いた経験から、官僚についての知見を深めていた。「官僚派遣制度は、以前から知っていましたし、実際に若い官僚が派遣されるお話も聞いたことがあります。皆さんが思っているより官僚の方って、いろんなところに派遣されているんですね。ただ、それほどうまく制度として機能していないと聞いたこともあります」といい、「私立の学園を舞台にして、政治と絡めたら面白いんじゃないか」とひらめいた。物語の構想を練り始めた2020年頃に、飯田氏に「官僚派遣された先生はどうですか?」と提案。「このテーマを描いたら、面白いものになっていくかもしれないという感覚は最初からあった気がします」と、当初から手ごたえをつかんでいた。

 作品を書くにあたり、派遣を経験した官僚や関係各所に何度も取材を重ねた。「映画『新聞記者』の後も個人的に、官僚について知りたいと思って勉強は続けていました。また、私、コロナ禍の時に演劇の存続のために政府交渉やロビー活動のようなことをやっていたんです。その時に、官僚の方々がもの凄く力になってくれました。ただ、システムの中でうまくいかないことが多くて…とても大変なんだなということも分かりました」と、理想と現実の狭間で奮闘する官僚の姿も目の当たりに。「みなさん非常に一生懸命やられているという印象。一生懸命なんだけど、(世間から見て)悪者になってしまう…というような点は、リアルベースで書けてるんじゃないかな」と、官僚を取り巻く描写もドラマの中で丁寧に表現した。

 こうして、詩森氏ならではの視点で全く新しい学園ドラマが生まれた。何より大切にしているのは、官僚や教師といった、登場する職業従事者へのリスペクト。「私は“すべての職業は尊敬されるべき”だと思っています。職業を描くとき、職業に対してリスペクトのないものは許しちゃいけない」と語り、「教師という仕事は、とても素晴らしい仕事。人の人生に関わるという意味では他の仕事と簡単に一緒にはできないお仕事だと思うので、リスペクトの気持ちが伝わるドラマになっていたらいいなと思います」と願いを込めた。

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