「あんぱん」寛先生“遺言”に感銘「もし自分に」竹野内豊語るラスト裏側「記憶のどこかに」ロス民へ伝言

[ 2025年5月26日 08:15 ]

「あんぱん」柳井寛役・竹野内豊インタビュー(1)

連続テレビ小説「あんぱん」第41話。柳井寛(竹野内豊)は往診の帰りに倒れ…(C)NHK
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 女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は26日、第41話が放送され、朝ドラ初出演となった俳優の竹野内豊(54)が好演し、柳井嵩(北村匠海)を導いてきた伯父で医師の柳井寛が急逝した。“名言製造機”と話題を集めた、今作随一の人格者が“突然の退場”。涙の視聴者が相次ぎ、インターネット上には「寛先生ロス」が広がった。大きな反響を呼んだラストシーンの舞台裏を竹野内に聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなどのヒット作を放ち続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。

 第41回は1940年(昭和15年)1月、柳井嵩(北村匠海)は卒業制作を仕上げたら、朝田のぶ(今田美桜)に会って自分の気持ちを伝えようと、作業に没頭。その折、嵩のもとに“ある電報”が届く…という展開。

 休日返上、食事も抜き気味だった柳井寛(竹野内豊)が隣村への往診の帰りに倒れる。

 辛島健太郎(高橋文哉)が息を切らして運んだ電報には「チチキトク スグカヘレ」――。嵩は「まだ…帰れません。これを仕上げないと、伯父さんに顔向けできないから」。のぶらしき女性もいる銀座を描いた“最高傑作”を徹夜で完成。座間晴斗(山寺宏一)に修了を認められ、高知に急行した。

 嵩が襖を開けると、寛は既に旅立っていた。

 嵩は縁側で放心。柳井千代子(戸田菜穂)は「寛さんは、怒ってなんかいませんきね。寛さん、亡くなる前にね、嵩さんのこと、話しよりました」と寛の“遺言”を伝えた。

 寛「嵩、今頃卒業制作、必死に頑張りゆうがやろ。わしが邪魔してどうするがな。最後まで描き上げんと、半端でもんてきたりしよったら…(左腕を布団から出し)半端でもんてきたりしよったら、(拳を握り締め)殴っちゃる。(千代子が手を取り)嵩が決めた道や…嵩の生きる道や…投げ出すがは許さん…。嵩も、千尋も…投げ出すがは許さん」

 柳井千尋(中沢元紀)も涙。千代子は「寛さんと嵩さんは、やっぱり心が通じ合うちょったがやね」。嵩は号泣した。

 寛役のモデルとなった、やなせ氏の伯父・柳瀬寛さんも実際に急逝。史実ベースの展開となったが、竹野内は「もう少し長く嵩と千尋の成長を見守りたかったので、私個人としては残念に思いました」と無念な思いを吐露しつつも「寛自身は一人の医者として今まで多くの人と出会い、様々な人生の在り方や終わり方を見届けてきたはずで、自分なりの死生観を持っていたんじゃないでしょうか」と解釈した。

 嵩が到着した際には、竹野内は“遺体役”。テストの段階から白い布を顔に掛けられており「みんなの顔は一切見ることができず、私は布団が持ち上がらないように息を止めて、じっと動かないでいるのに必死でした(笑)。カットがかかると『ああ、苦しかった』と(笑)。ここ数年は亡くなる役ばかりなんです。布団の中で『みんな、頑張れ』という感じでした(笑)」。明るく振り返るのが“ロス民”にはせめてもの救いだ。

 「戸田さんが私の手を取ってくださって、千代子さんの想いがひしひしと伝わってきました。撮影の後、(女中の)おしんちゃん(瞳水ひまり)の切ない表情にやられてしまった、と出演者たちみんなが褒めていたんですけど、私はまだ拝見できていないので、放送を楽しみにしています」

 寛の“遺言”には、竹野内も感銘を受けた。

 「もし自分に息子や子どもがいたら、同じようなことを言うと思います。人生というのは、ほとんどが自分の思い通りにはならないことの方が多かったりするのではないでしょうか。でも、年を重ねて自分の道を振り返った時、意味がないと感じた時間にも実は大切なことが詰まっているんじゃないか。だから、自分がやりたいと決めたことは、自分を信じて途中でサジを投げない。結果よりも、目標に辿り着くまでのプロセスが大事で、価値のあることだと思います。そういう気持ちを腹の底に置いて、台詞に込めました」

 史実ベースの作劇について、制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーは「寛のモデルとなったやなせたかしさんの伯父も同じタイミングで亡くなられているので、そこは史実通りに描いています。電報を受け取ったのが卒業制作の真っ只中で、徹夜で終えて慌てて高知に向かったものの、伯父の家に着いた時には既に亡くなっていたのも史実です。嵩と千尋の喪失感を描くため、寛の最期は当初から考えていたこのタイミングになりました。寛先生ファンの皆さんには申し訳なく、我々も心苦しかったのですが、寛の言葉は皆さんの心の中にずっと残り続けるものだと思います」と説明。

 寛の“遺言”は、中園氏のオリジナル。「やなせさんは、あの時もっと早く汽車に乗っていればという後悔もあったと著書などでも述べられています。どれだけ願おうが、もう二度とあの時間は戻ってこない。でも、きっと寛はこのような思いだったのではないかと想像しながら、中園さんが気持ちのこもった素晴らしい台詞を書いてくださりました。嵩にとっても寛の存在は大きかったですが、寛にとっても嵩や千尋の存在はとても大きかったと思うのです」と明かした。

 最後に“ロス民”へのメッセージを問われると、竹野内は「嵩、のぶちゃん、千尋の成長を最後まで応援して、見届けていただけたら、うれしいです。(ロスになっても)次の展開が面白いから、大丈夫です!(笑)。皆さんの思い出として、記憶のどこかに残していただけるだけで光栄です」。謙虚な人柄がにじんだ。

 =インタビュー(2)に続く=

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