永瀬拓矢前王座 勝機スルリ…「ちょっとエアポケットに入ってしまった」 19年5月以来の無冠に

[ 2023年10月12日 04:35 ]

藤井八冠(手前)と感想戦を行う永瀬王座(撮影・須田 麻祐子)
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 永瀬に勝機は複数回あった。そのチャンスが白星に結びつくことはなかった。「ちょっとエアポケットに入ってしまった。(正着なら)難しい手順ではなかったので、逃してはいけなかったと思います」。明瞭な口調の陰に悔しさが交じっていた。

 開局後、わずか23手目で右桂を五段目に跳ねる奇襲は、確かに藤井を苦しめた。じわじわとリードを奪い、一度は逆転されながら、今度は自王を上位に進める予想外の受けを見せ再逆転に成功。それでも藤井の妖力に逆らいきれず吸い込まれたエアポケット。まるで第3局のVTRだ。

 「一局一局全力で挑むことができた。内容も手応えがあった。でも第3、4局のどちらかを勝っていたら…」

 今シリーズを制すれば、永世称号「名誉王座」を獲得していた。七段だった19年5月以来の無冠だが、永瀬は敢然と前を向く。「個人としては悲観していません。またゼロから勉強したいです」。大盤解説でのあいさつから引き揚げる背中に「よくやった」の声が飛んだ。

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