これが理想のミニ・クーパー!? F1ドライバーの愛車が日本にあった!?『ジャパンミニデイin浜名湖』の凄いクラシック・ミニ

ステージイベントの目玉は「クラシック・ミニ界の4賢人」トークショー

2024年11月3日(日)、静岡県浜松市にある渚園キャンプ場にて『ジャパンミニデイ in 浜名湖』が開催された。このイベントは全国のミニ専門店が加盟する団体である「JMSA」(Japan MINI’s Specialist Association)が主催するクラシック・ミニを対象とした日本最大級のフィールド・ミーティングとなる。
ミーティング当日は前日の悪天候から打って変わり、晴天に恵まれ、敷地面積4万平方メートルを誇る渚園キャンプ場の芝生広場には、全国の120近いオーナーズクラブと個人参加併せてミニを中心に3000台のエントリーと4500名のファンが集結した。

さて、1959年のクラシック・ミニの誕生から65周年の節目を迎えた2024年に開催された今回は記念すべき32回目、つまりは「ミニ」回になる。そんな今回の『ジャパンミニデイin浜名湖』でステージイベントの目玉となったのが「理想のミニ」をテーマにしたミニマルヤマ&JMSA役員によるトークショーだった。

パネラーを務めるのは、「クラシック・ミニ界の4賢人」こと『ミニマルヤマ』の丸山和夫さん、『ガレージJ&B』の坂野純平さん、『ブリティッシュガレージDINKY』の石塚直樹さん、『アレック』の西尾忠幸さんの4人だ。

丸山さんにとっての理想を体現した「ミニマルヤマコンセプトMK.I」
トークショーのテーマに合わせて賢人たちは思い入れがたっぷり詰まった愛車を展示した。その中でも圧巻だったのが丸山さんが持ち込んだ「ミニマルヤマコンセプトMK.I」だ。
クラシック・ミニのファンで彼の名前を聞いたことがない人はいないだろう。古くからわが国のミニシーンを牽引してきた第一人者であり、1980年代に本国イギリスでも半ば忘れられた存在だったジョン・クーパーを探し当て、共同開発でミニ1000ベースの「ジョン・クーパー1987」(ジョン・クーパー・コンバージョンキット)をリリース。これが日本のみならず世界中で話題になったことから、ローバーによるミニ・クーパー復活への道筋を切り開いたのであった。

そんな丸山さんがミニとの半世紀に及ぶ付き合いの中で、長年温めてきたアイデアをふんだんに盛り込み「理想のミニ」として製作したのが、1968年型ミニMK.Iをベースにした「ミニマルヤマコンセプトMK.I」であった。
オリジナルのサルーンよりも低く、スプリントよりも若干背の高い特徴的なスタイリングのボディは、丸山さんが自らモックアップを作り、樹脂製のボディワークにおいては世界でも屈指の技術を持つ工房に依頼して、高精度の複合樹脂を使ってホワイトボディを製作した。一見するとスプリントに見えるかもしれないが、サブフレームやドアの取り付け位置を修正するなど、おおよそ27箇所がオリジナルの寸法になっている。ピラーモールは備えないが、ドリップモールは「ミニらしさ」を残すために装着されている。

また、MK.Iの特徴であるアウターヒンジのドアやスライド式のウィンドウを備えないため、一見するとMK.IIIベースのようにも見えるかもしれないが、丸山さんのこだわりを反映してMK.III以降の特徴となるインナーヒンジドアやレギュレーター式ウィンドウに敢えて変更している。さらに、ステアリングホイールの取り付け角度を修正し、サブフレームの車内への張り出しがなくなったことからドライビングポジションはモダーンかつ運転しやすいものへと改良されている。なお、クーラーが嫌いな丸山さんの意向により取り付けられてはいない。
「ミニマルヤマコンセプトMK.I」は今回のミーティングに先立つこと3ヶ月前、8月25日に富士スピードウェイで開催された『32Fesクラシック・ミニ・フェスティバル』にて車体のみの状態でお披露目され、今回はジョン・クーパーがチューンを手掛けた1271ccのA型にウェーバーキャブを組み合わせたエンジンを搭載し、あとはナンバーを取得すれば公道走行が可能という状態へと完成度を上げての展示となった。
「ボクはミニで好きに遊ぶ。だから、みんなも好きにミニで遊べ」
旧車の世界に多く見られるオリジナル原理主義者の中には、希少なMK.Iをベースにしたカスタム・ミニということで、あるいは眉をひそめる人がいるかもしれない。だが、それこそ丸山さんが「ミニマルヤマコンセプトMK.I」を製作したひとつの狙いでもあるという。

丸山さんが若かりし頃はミニと言えばMK.Iしか存在せず、今のようにMK.IIやMK.III、あるいは高年式の12インチや13インチホイールを装着したクルマは当然選ぶことができなかった。丸山さんは「アウターヒンジやスライドウィンドウは技術的にレベルが低いものであり、もちろんそれが好きな人もいるとは思うが自分の好みではない」と常々公言していた。

そこで今回の「ミニマルヤマコンセプトMK.I」を製作するに当たって、お気に入りのMK.Iをベースに自分の好みを最大限反映した理想の1台を作ることにしたというのだ。

これは何かに似ていないだろうか? そうだ、ファンが高年式のミニをベースにグリルやホイール、センターメーターへと交換してMK.IやMK.II、MK.III仕様を作り上げるのと基本的な考え方は同じことなのだ。
しかも、丸山さんは「ミニマルヤマコンセプトMK.I」のことを「僕にとっての理想のミニ」と述べるだけで「究極のミニ」とか「至高のミニ」などの表現は一切使っていない。すなわち、丸山さんは本来趣味として楽しむべきエンスーの世界で横行するオリジナル原理主義であるとか、希少モデルの所有やカスタムの度合いによるオーナー同士の意地の張り合い、人間関係のいざこざなどを「くだらないもの」と暗に否定し「ボクはミニで好きに遊ぶ。だから、みんなも好きにミニで遊べばいい」と主張しているのだ。その精神はどこまでも自由であり、誰に対しても差別のないフレンドリーなものである。

クラシック・ミニ界の頂点にいる大御所がこのようなスタンスなのだからミニファンも必然的にそれに従うことになるのだろう。新参者に対するいやがらせやつまらない人間関係のいざこざに愛想を尽かし、せっかく若手が入ってきても定着することがなく、年を追うごとにメンバーの平均年齢が上がって衰退が目立つエンスー車クラブやイベントがある一方で、クラシック・ミニのオーナーズクラブやイベントではミニの現役時代を知らない20代や30代の新規加入や参加が今もって絶えることはなく(むしろ増えているとの印象さえある)、若いファンが中心となって盛り立てているという違いになって現れているのだ。

すなわち、丸山さんをはじめとする「クラシック・ミニ界の尊敬すべき先輩」たちのスタンスを、後に続く世代が背中を見て自然に学んでいるということなのだろう。そのことが現在まで続く衰えるところを知らないミニ人気の背景にあると筆者は思うのだ。
賢人たちが持ち込んだ希少なクラシック・ミニを紹介
丸山さんの「ミニマルヤマコンセプトMK.I」だけでなく、トークショーを盛り上げた石塚直樹さんのオースチン・ミニクーパーS、坂野純平さんのモーリスミニクーパーS、西尾忠幸さんのミニ・スプリントGTSのいずれも国宝級のクラシック・ミニだ。

石塚さんのオースチン・ミニクーパーSはかつてのオーナーはF1レーサーのグラハム・ヒル(※)というから驚きである。石塚さんがこの車を入手した経緯は、付き合いの長いイギリス人の前オーナーに「もしも手放すときは最初に声をかけて欲しい」と頼んでいたところ、前オーナーが心臓の手術をすることを機に手放すことを決意したそうで、1999年にシルバーストーンサーキットで開催されたミニ40周年記念イベントにエントリー後に石塚さんの手元にやってきたという。
※グラハム・ヒル
1962年と1968年のF1チャンピオンで、世界三大レース=F1モナコ・グランプリ、ル・マン24時間耐久レース、インディ500を制覇した唯一のドライバー。息子のデーモン・ヒルは1996年にF1チャンピオンとなり、これはF1史上初の親子チャンピオンとして記録される。

その後、前オーナーとの「譲渡後、10年間は表に出さないでほしい」との約束を守った石塚さんは、2009年に初めてこのクルマの所有を公表したという。イギリス国内では一時「グラハム・ヒルが所有していたミニはどこへ行った?」とちょっとした騒ぎとなったそうだが、今はイギリスのミニファンも然るべきオーナーの手に渡り、大事に保管されているということで納得して落ち着きを取り戻したそうである。

一方、坂野さんのモーリス・ミニクーパーSも負けず劣らずのヒストリーを持つ車両で、そのことは「名古屋5」という一桁ナンバーを現在に至るまで維持していることからも分かるだろう。すなわち、このミニクーパーSは希少な当時の正規ディーラー車ということになる。
この車両の前オーナーは四国在住だったそうだが、この希少なナンバーを維持し続けていたとのことで、手放す際にナンバーを維持するため名古屋に里帰りさせるべく、坂野さんへと譲られたという。

現在では入手困難なCOSMICのホイールにスピードウェルのマフラーを装着しており、最近になって経年劣化で痛んだボディを修復するため、クラシック・ミニのレストアで有名なブラウンオートボディに依頼して、オリジナルのパネルを使用してボディを床から全て交換したという。

そして、最後は西尾さんのアーデン・ミニ・スプリントGTSだ。
1965年にレーサーのネビル・トリケットが、ミニの速度性能向上を目的にボディを板金加工して背を低くしたスプリントを製作。

そして、翌年ジェフ・トーマスが1950~1970年代初頭にかけてF1で活躍していたレーシングコンストラクターのロブ・ウォーカー社(※)に話を持ち込み、ジョン・クーパーがチューンしたエンジンを載せてロブ・ウォーカーGTSとして販売された。
※ロブ・ウォーカー社
同社はスコッチウィスキーで有名なジョニー・ウォーカーの創業者の子孫であるロブ・ウォーカーが私費で運営していたプライベート工房。クーパー・クライマックスを使用してF1に参戦した同レーシングチームは1958年の開幕戦アルゼンチン・グランプリにおいてF1史上初のミッドシップ車による優勝を記録。ドライバーはスポット参戦のスターリング・モス。また、第2戦モナコ・グランプリではモーリス・トランティニアンが勝利して開幕2連勝を飾った。ちなみにクーパーワークスはこの年、未勝利に終わっている。
のちにこの事業はスチュアート・アーデンが引き継ぐことになる。西尾さんのアーデン・ミニ・スプリントGTSは当時製造されたオリジナルとのことだ。

「クラシック・ミニ界の4賢人」が会場に持ち込んだ車両の価値はいずれもプライスレス。どれも本当に希少なクルマなのだが、各人はそれを自慢するでも偉ぶるでもなく、多くのファンに楽しんでもらいたいとの思いから展示したのだ。 筆者のようにクラシック・ミニにさほど詳しくない人間がクルマについて質問しても、イヤな顔ひとつせず、優しく丁寧にフレンドリーに教えてくれた。

また、丸山さんに至っては「興味のある人は『ミニマルヤマコンセプトMK.I』のシートにぜひ座ってみてください」とドアを開けてコクピットを解放してくださったほど。これほど希少なミニを見ず知らずのファンのために解き放ち、傍でニコニコしながら気さくに会話に応じてくれるとは……こうなると賢人どころかもはや聖人である。

筆者は残念ながら『ミニマルヤマ』以外のお店、すなわち『ガレージJ&B』や『ブリティッシュガレージDINKY』『アレック』を訪れたことはないのだが、トークショーで話を聞き、一言二言クルマについて言葉を交わしただけでも4賢人がミニに対して深い愛情と広範な知識を持ち、徳のある人格者であることはすぐにわかった。おそらく、ミニが好きになってそれぞれの店を訪れたファンは、賢人たちと話しているうちに人柄にも惚れて、彼らが愛してやまないミニがますます好きになってしまうのだろう。尊敬すべき同好の先輩を持つミニのファンは、それだけでも幸せなことなのではないだろうか。
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