伝統の重みに受賞者の感激もひとしお!

[ 2025年2月24日 20:00 ]

キネマ旬報ベスト・テンの表彰式で記念撮影に臨む(前列左から)池松壮亮、忍足亜希子、松村北斗、河合優実、三宅唱監督、(後列左から)定井勇二氏、木寺一孝監督、井上竜太氏、野木亜紀子氏、斎藤環氏 
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】第98回キネマ旬報ベスト・テンの表彰式を取材した。2月20日、場所は東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホール。一帯の再開発のため、隣にあった東急百貨店も取り壊され、周辺の景色は一変したが、振り返れば、1985年から隔年開催で始まった東京国際映画祭も最初はオーチャードホールがメーン会場だった。87年の第2回、インターナショナル・コンペティション部門の国際審査委員長を務めたのは米俳優グレゴリー・ペック。「ローマの休日」「アラバマ物語」の大スターを目にして興奮したのも懐かしい思い出だ。

 正面入口に向かって歩いていると、楽屋口の少し前で池松壮亮(34)とすれ違った。先を歩く主婦がまず気付くと、池松が丁寧に会釈。主婦の感激ぶりを見て「やっぱりいい人だなあ」と感じ入ったことを書き添えておきたい。

 79回を数えた毎日映画コンクール、66年度から74年度までの中断を挟みながら今年67回を迎えたブルーリボン賞、そして98回を数えたキネマ旬報ベスト・テン。歴史と伝統の映画賞のセレモニーに3つ続けて足を運んだが、それぞれ特徴、味があっておもしろいものだ。
 1924年(大13)に始まったキネ旬ベスト・テン。今回が19回目という笠井信輔アナ(61)の司会で進んだが、映画人への表彰を前に行われた「映画感想文コンクール」の受賞者セレモニーには心洗われた。「低学年の部」「中学年の部」「高学年の部」「中学校の部」と3人の小学生と中学生1人が賞状を受け取った。各児童の感想文を笠井アナが読み上げたが、いずれも素直で秀逸。この企画は続けていって欲しいと思う。

 続いて監督や俳優たちへの表彰。三宅唱監督(40)の「夜明けのすべて」が「日本映画作品賞」「日本映画監督賞」「読者選出日本映画監督賞」「主演男優賞」の4冠を獲得した。毎日映コンでも「日本映画大賞」「監督賞」「TSUTAYA DISCAS映画ファン賞」の3冠に輝いており、24年度を代表する1本と言っていいだろう。

 同作品でパニック障害を抱えた会社員を演じ、主演男優賞に輝いたSixTONESの松村北斗(29)は「歴史ある賞をいただき、心の底からうれしく思います」と喜びをかみしめた。主演賞の2人が飾る「キネマ旬報」25年2月号増刊号の表紙に関しても「ここまで歴史ある雑誌だと、ただの表紙ではないですね」と恐縮してみせた。

 今年も2月に封切られた松たか子(47)との共演作「ファーストキス 1ST KISS」がヒット中。俳優としての成長は著しいが、グループ活動との両立については「映画は作品が主軸。みんなで自分の要素を渡し合って、1つの貯金箱を貯めていくような。そこに大きな違いを感じながら活動しています」と話し、「これからもお世話になった方々に感謝の気持ちを持ちつつ、返せるときに恩を返しつつ、そして、またそういう方と出会えるワクワクを胸に日々精進していけたらと思います」と決意を新たにした。

 「あんのこと」「ナミビアの砂漠」で主演女優賞に選ばれた河合優実(24)は毎日映コン、ブルーリボン、キネマ旬報の主要映画賞を制し、3月14日発表の第48回日本アカデミー賞にも弾みをつけた。「表現という自分の仕事が、どういう働きかけになっているのか迷うこともありますが、もらった勇気を胸にこれからも諦めずに光を探していけたら」と前を向いた。

 助演女優賞は「ぼくが生きてる、ふたつの世界」(監督呉美保)に出演した忍足亜希子(54)が受賞。ろう者俳優としての初受賞。「アイ・ラヴ・ユー」で第54回(2000年)毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞した際に取材をしたが、あれから四半世紀。うれしい“再会”なった。

 呉監督がお祝いに駆けつけ、「この作品で初めて出会いましたが、お芝居に対して誠実な方。小学生の娘さんがいて、にじみ出る母性、あったかい人です」と人柄を紹介。一方で「天然で、めちゃくちゃ面白いです」と明かした。

 開演前にあいさつを交わした池松が奥山大史監督(28)の「ぼくのお日さま」と阪元裕吾監督(29)の「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」の2作で助演男優賞。「ぼくのお日さま」は、共演した中西希亜良(13)と越山敬達(15)も新人賞を贈られて堂々の3冠。池松は「無垢な才能というか、未来の宝物。2人ともキラキラしている」と自分のこと以上に喜んでいた。やっぱり良いヤツだ。

 キネ旬ベスト・テン表彰式。例年、毎日映コンと重なる傾向にあるが、受賞者のうれしそうな顔を見て、改めて伝統と権威を強く感じた次第だ。

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