「豊志賀」「らくだ」、大ネタ2席を堪能!

[ 2025年2月18日 18:30 ]

春風亭小朝
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】2月15日の昼、東京・有楽町よみうりホールで開かれた春風亭小朝(69)の独演会に足を運んだ。1100人を収容する大きな器を満員にしてしまうのだから、改めて小朝人気を実感する。

 めくりに開口一番の文字。まず林家ぽん平(28)が「子ほめ」を大きな声で元気に演じた。続いて登壇した小朝が「ぽん平さん。開口一番が名前じゃないですからね。林家正蔵さんの次男で、5月に二つ目に昇進します」と紹介すると、会場から「ほーっ」という声ともに激励の拍手が送られた。2019年4月に父の九代目正蔵に入門。20年9月に前座となって勉強中だ。兄の林家たま平(30)ともども今後の飛躍に期待したい。

 小朝の一席目。披露したのは「豊志賀」だった。近代落語の祖とも言われる三遊亭円朝が1859年に創作した長編怪談噺「真景累ケ淵」の中でもよく語られるエピソードだ。

 江戸の根津七軒町に住む富本の師匠・豊志賀は、16歳も年下の出入りの煙草屋・新吉と恋仲になる。豊志賀の父親は皆川宗悦という鍼(はり)医兼高利貸しだったが、20年前に深見新左衛門という旗本に殺されていた。その新左衛門のせがれが新吉という複雑な構図。弟子の中に小間物屋の娘、お久がいて、豊志賀は新吉との仲を疑ってヤキモチを焼くようになる。そんな折、豊志賀の目の下にでき物が出来て…。

 場内の照明が時に暗転したりして演出効果もばっちり。後ろの席の御婦人が息をのんで聞いている。怪談噺に触れたのは初めてのようだ。同行の女性に「落語って、滑稽噺と人情噺だけでと思っていたけど、こういう噺もあるのね」と大いに興味をそそられた様子。それもこれも複雑な人間関係を丁寧に分かりやすく語った小朝の話術の力。これまた円朝の代表的な怪談噺「牡丹灯籠」の「御札はがし」のCDを出している小朝だが、演目の硬軟問わずに観客を引き込んでいく力はさすがだ。

 仲入りを挟み、広瀬哲哉(55)が登壇。ブルースハープ演奏で魅了した。テンホールズハーモニカとも呼ばれる楽器。ハーモニカ奏者といえば、BS―TBS「おんな酒場放浪記」にレギュラー出演中の寺澤ひろみ(45)くらいしか思い浮かばないが、広瀬のような才人に出演を呼び掛けるのは、音楽通としても知られる小朝ならではだろう。

 その小朝の2席目は「らくだ」だった。らくだと呼ばれる長屋の乱暴者がふぐの毒にあたって死んでしまう。そんな折に訪れたのが屑屋さん。らくだの家には兄貴分がいて、やれ長屋の住人から香典を集めてこいだの、大家に通夜に出す酒や料理を届けさせろだの、八百屋さんに行って棺桶代わりの漬物樽を借りてこいだの…と次々と命じられたからたまらない。言うことを聞かないヤツには死体を背負って「かんかんのう」を踊らせると脅かすから始末に悪い。

 使いを終えた屑屋さんが兄貴分に勧められるまま酒を飲む。杯を重ねて酔いが回っていくと、屑屋さんが豹変。兄貴分との立場が逆転してしまう。この豹変するところが大きな見どころ。六代目笑福亭松鶴や八代目三笑亭可楽らが得意としていた大ネタだが、屑屋さんではないが、小朝の熱演には筆者も酔いしれた。

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