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11連敗、一時引退など乗り越え“最後のヨネクラ戦士”出田が18年目で戴冠 三迫会長「夢を与えた」

[ 2022年11月8日 22:43 ]

日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 ( 2022年11月8日    後楽園ホール )

プロ33戦目で初のベルトを獲得した出田裕一(中)
Photo By スポニチ

 タイトル初挑戦の日本スーパーウエルター級6位・出田裕一(38=三迫)が王者・川崎真琴(38=RK蒲田)に9回1分52秒TKO勝ちし、プロ18年目、33戦目にして日本王者となった。インターハイ準優勝などアマ出身の出田は05年にヨネクラジムからプロデビュー。06年度の全日本新人王に輝くなど12連勝を飾ったが、1勝10敗1分けと成績が落ち込み一度は引退。ヨネクラジムの閉鎖に伴い18年に三迫ジムへ移籍して現役復帰したものの、20年12月に9年10カ月ぶりの勝利を挙げるまで通算11連敗を喫していた。

 連敗中も接戦での判定負けやレフェリーストップでのTKO負けが多かったが、5月の前戦は5回TKO負け。三迫ジムの三迫貴志会長も「さすがにやめるだろう」と思っていたところ、「練習を休んでもいいですか」と現役続行前提で申し出てきたという。試合を組むのは練習次第と言い渡し、見守っていたところへ日本王座挑戦の話が来たため、「全力で勝たせる」(三迫会長)とジム一丸でバックアップしたという。

 おとなしい性格で一人で黙々と練習しがちな出田に、三迫会長が「ウチはチームで勝つんだ」と言い聞かせ、遠慮して参加していなかった朝練習に出席させたり、日本ライト級王者・吉野修一郎らとの走り込み合宿にも加わらせた。担当の横井龍一トレーナーに寺地拳四朗(BMB)を指導する加藤健太トレーナーも加わり、川崎の映像を見て戦略を立案。作戦的には「行くだけ」(横井トレーナー)だったが、腰が立ってしまう癖や、ダッキングする際にバランスが崩れる課題を修正するために下半身を強化。今まで浴びていた相手ジャブを避けられるようになった出田は「練習どおりにできたかな」とはにかみ、「臆するな。全てを出し切れ」とハッパをかけた三迫会長も「濃密な3カ月だった」と振り返った。

 連敗中、支えてくれたのは彩子夫人だったと明かした。「プロ目線ではもう終わりというところで、素人目線で“成長している。まだいける”と言ってくれた。成長を感じられたので、負けていても続けてこられた。復帰するにあたっては、まだ自分を出し切れていない、ボクシングをやってきた証を残したいと思った」とうれし涙をこぼした。ひたむきに努力を続ける姿に、最初は「なぜ出田さんはパンチを避けないんですか」と不思議がっていた拳四朗も「心を打たれる」と印象を替え、この日も応援に駆けつけた。くしくもこの日の興行「フェニックスバトル」を主宰した大橋ジムの大橋秀行会長はヨネクラジム出身。三迫会長は「ヨネクラから移籍してきた3人の1人。ヨネクラの系譜を受け継ぐ選手がウチに来て、ちゃんと結果を出した。全てがこの日のためにあった」と感慨深げに話し、「誇りに思う。みんなに夢を与えられると思う」と称えた。

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2022年11月8日のニュース