ASDの「顔つき」や「見た目」に共通点はあるの?【大人の発達障害】

[ 2025年5月9日 09:00 ]

発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)」の人は、表情や顔の特徴に一定の傾向があると言われることがあります。しかし、それは単なる偏見なのでしょうか? それとも、実際に科学的根拠があるのでしょうか?

本記事では、ASDの人に特徴的とされる「顔つき」や見た目のサインについて、精神科専門医の監修のもと、解説していきます。監修は、医療法人社団燈心会ライトメンタルクリニックの清水 聖童先生です。

ASDの人に特有の顔の特徴はあるのか?

科学的には、顔貌の特徴に関する研究は存在するものの、診断基準や個人識別に用いるべき明確な特徴は確立していません。

一部の研究では、ASD児に軽度の顔の形態的差異(顔幅や鼻幅の増大など)が報告されていますが、これらは成人における明確なデータに乏しく、また診断目的での使用には不適です。

「顔つき」よりも、表情や視線、社会的な非言語的行動がASDの傾向を示すポイントとされています。

ASDの人によく見られる「表情」とは

1. 表情の変化に乏しい

ASDの人は、表情の変化が少なく「感情が読み取りにくい」と感じられることがあります。

顔の表情生成に関する脳機能画像研究では、扁桃体や前頭前皮質の活動が定型発達の人と異なることが確認されています。

2. 視線が合わない、または視線が固定されている

視線回避は、社交的不安や顔知覚回路の神経活動の違いに関連しています。

3. 場にそぐわない笑顔や笑い

社会的状況の解釈の困難さが背景にあり、社会的手がかりに基づく適切な表情反応が難しい場合があります。

なぜそうした表情や視線の特性が生じるのか

感情表現の神経ネットワーク(扁桃体・前頭前皮質など)の違いや、社会的認知の困難が主な要因とされています。

幼少期の経験や学習不足、感覚過敏・鈍麻といった感覚処理の違いも、これらの特性に影響を与えます。

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次:ASDの人によく見られる「身だしなみ」の特徴

ASDの人によく見られる「身だしなみ」の特徴

身だしなみについては診断的特徴ではなく、生活上の特性として以下のような傾向が見られることがあります。

1. 身だしなみに関心が薄い、または強いこだわり

無頓着なタイプは服装や髪型に注意を払わない一方、こだわりが強いタイプは特定の服やスタイルに固執します。

2. 特定の服や髪型へのこだわり

感覚過敏(とくに触覚)から、特定の素材やスタイルの衣服を好む傾向があります。

3. セルフケアの困難

髪や爪、ヒゲなどの手入れを忘れやすく、セルフケアのルーティンが確立しづらい場合があります。

4. 香水や化粧品の使用を避ける

強い匂いや皮膚刺激に敏感なため、香水や化粧品を使わないケースが多い傾向にあります。

顔でASDは判断できないが、表情や身だしなみには傾向も

ASDの人に顔貌の診断的特徴は存在しませんが、表情や視線行動、身だしなみの特性は社会的行動や感覚処理の違いに基づく科学的な説明が可能です。

これらの傾向には個人差が大きく、偏見を持たず理解を深める姿勢が求められます。

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監修者プロフィール

清水 聖童先生

精神科専門医・医療法人社団燈心会ライトメンタルクリニック理事長。心理療法、生活習慣、栄養学など幅広い知識を背景とした精神予防医学を専門とし、病前から介入する精神医療を模索したクリニック「ライトメンタルクリニック」を立ち上げる。メンタルヘルスに関する記事監修や講演、取材対応も積極的に行い、専門的な知見を広く発信している。

<Edit:編集部>

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