元白鵬 説得聞かず退職 横綱6人目…角界去る異常事態 弟子は動揺 「あってはならない」嘆く親方も

[ 2025年6月3日 04:30 ]

元横綱・白鵬の宮城野親方
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 歴代最多45回の優勝を誇る大横綱が角界を去ることになった。日本相撲協会は2日、元横綱・白鵬の宮城野親方(40)が9日付で退職すると発表した。東京・両国国技館で臨時理事会を開き、同日付の退職届の受理を承認した。弟子の暴力問題で昨年4月に部屋が閉鎖。1年以上経過も再開できず、退職の意向を固めていた。横綱が定年前に退職するのは平成以降で6人目。宮城野親方は故郷のモンゴルから今週中に帰国予定で、9日に会見を開く見通しだ。

 臨時理事会では、冒頭に宮城野親方から「退職願」の届け出があったことが報告され、伊勢ケ浜部屋の処遇に関して話し合いが行われた。一門の浅香山理事(元大関・魁皇)、宮城野部屋を預かる伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)らが宮城野親方の近況を報告。7月に伊勢ケ浜部屋の師匠が交代するタイミングで浅香山部屋に転籍し九州場所後にも預かりを解除するプランを提示するなど協会執行部を交えて説得したものの、宮城野親方の退職の意思は固かったという。出席者によると八角理事長(元横綱・北勝海)は「残念ですね。(届け出を)受けるしかない」と話したという。

 宮城野部屋の力士らは当面伊勢ケ浜部屋で継続して預かり、他の部屋が預かる希望を申し出た際は理事会で決議することを決めた。また9日付で伊勢ケ浜親方が年寄「宮城野」を襲名、照ノ富士親方(元横綱)が年寄「伊勢ケ浜」を襲名し、伊勢ケ浜部屋の新師匠になることも承認した。現伊勢ケ浜親方は定年後も参与として再雇用される。

 宮城野親方は部屋の処遇に不満を抱え、以前から折り合いの悪いモンゴル出身の後輩の照ノ富士親方が「師匠」になることに耐えられなかった。平成以降に在位していた横綱15人のうち定年前に退職するのはこれで6人目だ。師匠が退職する衝撃的なニュースに弟子たちは動揺を隠しきれない様子だ。午後の研修会に参加した幕内・伯桜鵬は無言のままタクシーに乗り込み、幕下・炎鵬も「突然聞かされて整理がつかない。何も考えられない」と沈痛な面持ち。同じ一門の朝日山親方(元関脇・琴錦)は「貴乃花じゃないけれど、協会にとって良くないこと。あってはならない」と嘆いた。

 夏場所は大の里のスピード横綱昇進で沸いた相撲界だったが、数々の記録を打ち立てた大横綱の幕引きは寂しいものとなってしまった。 (黒田 健司郎)

 ▽元幕内・北青鵬の暴力問題 宮城野部屋に所属した北青鵬が22年7月から23年11月にかけて、弟弟子2人にバーナー状にした炎を体に近づけるなどの暴行を重ねた。北青鵬は24年2月に現役引退。日常的な暴力行為を黙認し、部外者が関与しての口止め工作も判明した宮城野親方は委員から年寄への2階級降格と、3カ月の20%報酬減額処分。宮城野部屋は当面閉鎖となり、24年4月に親方と弟子らは同じ伊勢ケ浜一門の伊勢ケ浜部屋に転籍した。

 ◇宮城野 翔(みやぎの・しょう=本名白鵬翔)1985年3月11日生まれ、モンゴル・ウランバートル出身の40歳。モンゴル相撲の大横綱で、メキシコ五輪のレスリングでモンゴル初のメダル(銀)を獲得した父を持つ。15歳で来日し、宮城野部屋から01年春場所で初土俵。04年初場所で新十両。同年に入幕し06年夏場所で大関に昇進。その場所で初優勝。07年名古屋場所で第69代横綱に昇進した。10年に史上2位の63連勝。19年9月に日本国籍取得。21年秋場所後に現役引退。優勝45回、通算1187勝、幕内通算1093勝、横綱在位84場所はいずれも史上最多。22年7月に宮城野部屋を継承。得意は右四つ、寄り、上手投げ。現役時代は1メートル92、155キロ。家族は紗代子夫人と1男3女。

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