1日ひと掴みの「くるみ」で、 思春期の「注意欠陥多動性障害(ADHD)」が改善される可能性

カリフォルニア くるみ協会から嬉しいニュースが。
くるみを1日ひとつかみ食べることで、思春期の「注意欠陥多動性障害(ADHD)」症状によい影響を与える可能性があるというのです。
くるみが持つ「オメガ3脂肪酸」は、脳の発達と機能に重要な栄養素
世界でもっとも評価が高い医学雑誌のひとつ「ランセット」が発行する『eClinicalMedicine』発表の研究※1によると、以下が報告されました。
1日ひとつかみのくるみ(30g)を含む食生活を送った中高生の、注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む注意機能の改善や流動性知能※2関連の機能向上、神経心理学的機能※3の改善
くるみはナッツの中で唯一、発育段階における脳の発達に重要な役割を果たし、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸=ALA)を豊富に含んでいます。
脳の発達には大量のエネルギーと栄養素を必要とするため、必須栄養素が不足すると、最適な成熟が妨げられる可能性があります。
オメガ3系脂肪酸は、脳の発達と機能に重要な栄養素と考えられています。
認知機能とナッツとの関係は昔から注目されている
今回の最新研究結果について、長年、認知症の研究に携わっている朝田隆先生(メモリークリニックお茶の水院長、筑波大学名誉教授)は、以下のように評価しています。
昔から小学校のクラスに1人か2人はいる落ち着きのない子の多くが、近年、注意欠陥多動性障害(ADHD)だと知られるようになりました。
従来は子供の病気で大人になれば半分の人は治るとされていましたが、必ずしもそうでなく、最近では、職場での不適応等により大人になったADHDが注目されています。
この研究は、注意欠陥多動性障害(ADHD)者の注意や流動性知能などの認知機能に対してくるみが有効だと報告しています。
実は認知機能とくるみを始めとするナッツとの関係は、がんや心臓病と同様に以前から注目され、認知症予防の食事なら地中海食が定番であるとされていました。その特徴の1つが抗酸化作用をもつオメガ3系脂肪酸のくるみを食べることです。
ADHDは注意や段取りの司令部である前頭前野の障害とされています。本研究のポイントは発達段階の思春期なら、くるみが脳の障害を改善するとした点です。つまりくるみには成長によるADHDの改善を後押しする力があると考えられます(朝田 隆先生)
朝田 隆先生
認知症の早期発見・早期治療に特化した「メモリークリニックお茶の水」理事長・院長。東京医科歯科大学客員教授。筑波大学名誉教授。認知症予防と治療の第一人者。40年にわたり、1万人を超える認知症、および、その予備群である軽度認知障害の治療に従事するとともに、テレビや新聞、雑誌での啓発活動を続けている。著書多数
次:研究の詳細
研究の内容
今回発表された研究は、スペインバルセロナ市内の12の中学と高等学校*に在籍する11~16歳の生徒700人の任意参加者を、対照群と実験群の2つのグループに無作為に分けて実施。
実験群は、ひとつかみ相当のくるみ(30g)1パックを6カ月間与えられ、毎日1パック摂取するよう指示されました。
その結果、最低100日間のくるみの継続摂取により、注意機能※6の向上が見られ、注意欠陥多動性障害(ADHD)を発症している者については、他動性や不注意が低減するなど、授業中の態度に改善が見られました。*日本では一部、小学校に該当する年齢の参加者を含みます。
IISPVのニューロ・エピア研究グループの首席研究員兼コーディネーターのヨルディ・フルベス博士は、以下のように語ります。
思春期は脳の活動、機能的接続性、複雑な動作を行う機能が大きく発達する時期であり、その発達は、正常な発達に必要とされるエネルギーと栄養素を不足なく摂取する食生活など、環境およびライフスタイル要因に少なからぬ影響を受けます。くるみは、エネルギー源であり身体維持および発達に不可欠なオメガ3脂肪酸であるALAをはじめとする栄養豊富な食品です。このため、くるみは思春期の健康の強い味方と言えます(ヨルディ・フルベス博士)
本研究は、ペレ・ビルジリ衛生研究所(IISPV)がバルセロナ世界保健研究所(ISGlobal)とデルマール・ホスピタル医学研究所(IMIM)との共同で行った研究結果であり、思春期におけるくるみの摂取の重要性を示した初めての研究となり、今後の展開が非常に期待されています。
さらに、くるみに含まれるような必須栄養素をバランス良く含んだ食生活は、思春期の認知機能や精神の発達に望ましい影響があることが示唆されています。
また本研究結果を補足する目的で、妊娠期におけるくるみの摂取の影響と、乳児の認知機能および心理的成熟の焦点にあてた、観察ベースの2回目の臨床試験も予定されています。
最終的には、生涯にわたって健康的な食習慣を続けることの重要性を確認することを目指していくとのことです。
参考資料
※1 Pinar-Marti A, Gignac F, Fernandez-Barres S, Romaguera D, Sala-Vila A, Lazaro I, Ranzani OT, Persavento C, Delgado A, Carol A, Torrent J, Gonzalez J, Roso E, Barrera-Gomez J, Lopez-Vicente M, Boucher O, Nieuwenhuijsen M, Turner MC, Burgaleta M, Canals J, Arija V, Basagana X, Ros E, Salas-Salvado J, Sunyer J, Julvez J. Effect of Walnut Consumption on Neuropsychological Development in Healthy Adolescents: A Multi-school Randomized Controlled Trial. eClinicalMedicine. April 06, 2023. doi: 10.1016/j.eclinm.2023.101954. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10121389/
※2 流動性知能:新しい環境に適応するための能力。本研究では一次精神能力テスト(primary mental abilities;PMA)という評価指標で把握されました。
※3神経心理学的機能:注意機能や流動性知能、あるいは作業記憶、実効機能などを含めた、おもに脳の高次機能と呼ばれる機能を指します。
※4 Kouichi Yoshimasu: Epidemiology and Pathological Condition of Attention-deficit/
hyperactivity Disorder : From Perspective of Relationship Between Genetic and Environmental Factors, Journal of Japan Health Medicine Association, 29(2) : 130-141, 2020
※5 Daimei Sasayama, Rie Kuge, Yuki Toibana, Hideo Honda. Trends in Diagnosed Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Among Children,Adolescents, and Adults in Japan From April 2010 to March 2020, JAMA Netw Open. 2022;5(9):e2234179. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.34179
※6 注意機能:必要な情報を選び出す能力。本研究では注意ネットワークテスト(attention network test;ANT)という評価指標で把握されました。
<Edit:編集部>
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