【アニ漫研究部】キングダム「マンガダイブ」に漫画の次の道が見える?

[ 2023年11月25日 16:35 ]

「挑戦の光」で上映される「キングダム」の映像
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 東京・表参道スペースOで開催中の映像ミュージアム「マンガダイブ『キングダム』1億の光」を体験した。

 「キングダム」といえば原泰久氏がヤングジャンプ(集英社)で連載中の人気漫画。中国の春秋戦国時代を描く歴史活劇だ。単行本は既刊70巻で、発行部数1億部を突破。アニメ版は4期、実写映画も第三部まで公開されている。

 会場は4つのエリアからなり、中でも印象的なのは「挑戦の光」と名付けられた大部屋での映像だ。前後左右の壁面に床面を加えた“5面”をスクリーンとし、来場者は映像の中に身を置くような“没入体験”が味わえる。

 約25分の映像は、担当者によると「キングダムの物語のハイライト。単行本70巻分の計1万ページ以上の画像データを取り込んで使っている」という。秦の始皇帝をモチーフとする「政」と、彼を支えて天下の大将軍を目指す主人公「信」を中心に、物語を彩る武将や兵士、軍師ら魅力的なキャラクターが、原氏の描いたコマのまま“5面スクリーン”を駆け回る。

 没入体験を演出する設備も大がかりだ。映像を投影するプロジェクターは12台。前後左右の壁面はそれぞれ2台、床面は4台でカバーしている。プロジェクターは4台のスピーカー、2台のウーファーとも連動。体を震わすような低音も効いていて、訪れた人は、スクリーンを縦横無尽に飛び回るキャラたちが、自身の周囲を駆け回っているような感覚を覚えるはずだ。

 面白いのは、映像があくまで「漫画ベース」なことだ。躍動するキャラ達も、原氏が描いた“静止画”のコマやページのまま。劇中の名場面もスクリーン上を躍動する。配色も光などの特殊効果を除けば、白黒ベース。音楽や効果音はあるが、劇中に登場した“吹き出し”の活字のセリフを生かす形で展開する。

 会場全体に無数のページが広がり、渦を巻くような映像は圧巻。「キングダム」ファンは、心に刻まれた70巻分の感動が呼び起こされるはずだ。

 「マンガダイブ」と銘打った催しは、「チェンソーマン」「SPY×FAMILY」「ダンダダン」を題材に今夏、都内で行われて以来2回目。担当者は「前回のイベントから得たものは非常に大きく、例えば低音の生かし方などが進化しています。キングダムは作画の迫力もスケールの大きさも、非常にマンガダイブ向きの作品」と話す。確かに、広大な平原を進軍し、ぶつかり合う無数の兵の戦いは、あらためてこの作品のスケール感を実感するものだった。

 漫画は“止まった絵”で動きを感じさせる表現。読者の想像力がコマの間を埋めることで、動画以上に動きを感じさせられることも多い。そんな漫画の特性を生かしたまま映像とする「マンガダイブ」が、漫画の可能性を広げていく可能性もある。スマートフォンの登場で縦読み漫画“ウェブトゥーン”が広がったように、出版関係者の間では「漫画表現の新たなスタイルにつながるかもしれない」と期待も懸かる。「マンガダイブ」は早くも次のイベントを計画中といい、今後の動向が注目される。

 ▼「マンガダイブ『キングダム』1億の光」 12月9日まで開催。11~21時(最終日は17時まで)。チケットは全日日時指定、完全入れ替え制で一般2000円(特製クリアファイル付き)、高校生1700円(同)など。当日券あり。「挑戦の光」エリア以外にも、床に設置された振動デバイスが映像と連動して臨場感を盛り上げる「記憶の光」や、武将たちの名セリフが宙を舞う「栄光の光」、スマートフォンを使ってキングダムのAR(拡張現実)体験が楽しめる「感謝の光」が設けられている。

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