男性の3割が職場でセクハラを経験。「実は同性からが多い」「行為の強制も」…背景にある社会的課題とは

[ 2025年5月29日 09:00 ]

職場でのセクハラ被害というと、女性の問題と思われがちですが、実は男性も例外ではありません

オフィスギフトが20代以上の就労経験のある男性を対象に実施したアンケート調査では、約3割の男性が「職場でセクハラを受けた経験がある」と回答しました。

この調査結果を通じて、見過ごされがちな男性のセクハラ被害の実態と、その背景にある社会的な偏見や課題について考えていきます。

男性の3割が職場でセクハラを経験。同性からも多い

300名の男性に対し、職場でセクハラを受けた経験があるかどうかを尋ねたところ、「はい(ある)」と回答した人は全体の30.7%にのぼりました。

つまり、およそ3人に1人の男性が職場でセクハラ被害を経験しているという実態が浮き彫りになったのです。

どんなセクハラ被害を受けたのか?

体を触られる

「相談をしたときに、上司から肩を組まれたあとに、下半身を触られ抗議したら「冗談だよwww」みたいな感じでごまかされ場を和ませるためと言い訳をされた。」(40代男性)

「女性の上司を含めた飲み会の席でパンツ一枚でお酌の強要。酔ってきてから、股間を触られた。」(30代男性)

性行為の強要

「派遣で働きに来ていた年上女性から、仕事の弱みを握られて、性行為を強要されました。」(30代男性)

「女性からかなりきつい下ネタを言われホテルに誘われた。」(40代男性)

「飲み会の場で腹筋を触られてそのまま、男性器まで触りたいと言われたそうです。」(20代男性)

プライベートなことを聞かれる

「彼女の有無を聞かれた後に、体の関係のことや性癖について恥じらいもなく聞かれた経験があります。」(30代男性)

「結婚している女性に、なぜ結婚しないのか恋人はいないのかしつこく聞かれたことがあります。」(60代以上男性)

性的な質問をされる

「社会人1年目のときに、性体験の有無について聞かれたことがある。ないと答えると、ことあるごとに「童貞だから」と言われた。何人かで居酒屋などで飲んでいるときに、そういう話題になるのであれば、「よくある下ネタ」として理解はできた。しかし、言われた場所は、酒が入っていないオフィスだったので、どう対応するべきだったのか、未だに分からない。」(30代男性)

「上司に風俗に行くタイミングや回数を聞かれました。」(40代男性)

「陰部を指差され、ちゃんと使ってる?と聞かれている社員がいた。」(30代男性)

男なんだから!

「「男だから」など性別を理由とした押しつけとして、これくらいの荷物、持てるでしょと言われる。」(50代男性)

「上司は女子社員がミスしても何も言わないのに、私が少しでもミスをすると「男のくせに使えねー」など罵声を浴びせてきました。夜も飲み会に誘われ、私は下戸なので飲めない旨を説明しても「男だったら飲めよ」とアルコールを強要されたことが何度もあります。」(50代男性)

「男ならこれくらいやれと頭を叩かれている現場をみました。」(30代男性)

「同僚男性と上司の仲が良くなく、同僚の提案に対し「男のくせになよなよした考え」など性格や人格で感情的に否定する発言を繰り返していた。」(40代男性)

容姿を馬鹿にされる

「全員が集まる社員食堂で男の品評会。それも大声で。」(50代男性)

「頭髪が薄いことによる、からかいは何度か受けた。」(60代以上男性)

「太っている同僚に、「臭い」「マヨネーズ禁止」など、容姿をいじる内容の一方的な会話を時々聞きます。」(20代男性)

その他セクハラエピソード

「会社の直属の上司に、彼女とのイヤらしいことをしている時の動画を、スマホで見せられた時はセクハラだと感じました。」(40代男性)

「上司と並んで小便をしていた時に、上から覗き込まれ、小さいなと言われた。それを支店内でも言われ、そういう印象を持たれてしまった。」(30代男性)

「セクハラと聞くと異性からのイメージが強いが、男性へのセクハラで多いのは実は同性からのセクハラだと思ってます。私は当時工場系の会社に就職していたのですが、とても汚れる仕事でした。そうなると帰る前にシャワー室で体を流すことが多い為、必然的に複数人でシャワーやお風呂に入ってました。その時に、性器の形や包茎などの場合はバカにされたり、無理矢理皮を剝かれたりもありました。酷い時は相手の物を触らせられたり、それ以上のことを強要させられることもありました。」(30代男性)

「職場内のおじさんが、若い男性職員に対し、通り過ぎる際に肩やお尻を軽くタッチしてしたり、声を掛ける際に肩を触って声を掛ける動作がありました。そのおじさんにとっては、コミュニケーションのひとつだったとも思うのですが、若い職員からは嫌がられていました。」(30代男性)

次:なぜ男性はセクハラ被害を相談しないのか

なぜ男性はセクハラ被害を相談しないのか

セクハラを受けた経験がある方に対して、被害を誰に相談したかを尋ねたところ、112名中60名が「誰にも相談していない」と回答しました。

つまり、約半数の男性がセクハラ被害を誰にも打ち明けず、一人で抱え込んでいる現状が明らかになったのです。

ではなぜ、多くの男性が被害を相談せず、沈黙を選ぶのでしょうか。

「セクハラは女性が受けるものだという先入観があり取り合ってくれにくいと思われる。」(30代男性)

「なかなか男性のセクハラ被害と言われても周りが信じてくれない雰囲気がある。」(40代男性)

「告発すること自体が恥ずかしいと思う。」(30代男性)

「少人数の会社なので、セクハラ被害を訴えると、職場での自分の立場がなくなりそうなので言いにくいなと感じています。」(40代男性)

「細かいことを気にするタイプと思われて出世に影響すると思います。」(40代男性)

「セクハラ被害者は女性」という固定観念が世間に根強く存在し、男性の被害は軽視されがちな現状が浮き彫りになってきます。

被害者が男性か女性かで、世間の反応や対応は変わる

男性がセクハラ被害を訴えにくい現状を反映したコメントも寄せられています。

「セクハラは女性が被害を受けるものという先入観がある。男は少々の事なら我慢しろという風潮。」(40代男性)

「セクハラに関しては、訴えられた場合男性が弱すぎる。逆に男性が訴えても取り合ってはもらえないから。」(30代男性)

「実際に自分の時は取り合ってくれない経験をしています。」(30代男性)

「しょうがない、うらやましいくらい、など、意味のわからない事を言う人が実際にいました。女性が加害者の場合、周りはあまり真に受けてくれません。過度に責めると、逆にセクハラやパワハラにされる可能性が高いからです。」(20代男性)

「男ならそれくらい我慢しろ、むしろラッキーじゃん。という考え方の人がまだまだ多い。」(40代男性)

「男性が被害を訴えても取り合ってもらえない」──アンケートでは、そんな声が多く寄せられました。

これは、「男性は弱音を吐くべきではない」「多少のことは我慢すべきだ」といった社会的な通念が、今なお根強く残っていることの表れと言えるでしょう。

こうした固定観念は、男性のセクハラ被害者に対して訴える機会すら奪い、適切な対応を受けることを難しくしているのが現状です。性別による偏見の壁が、被害の“見えづらさ”をさらに深めています。

では、男性へのセクハラを防ぐには、どのような対策が求められるのでしょうか。

もっとも多かった意見は「セクハラの基準を明確にする」

職場でのセクハラ防止策として、207名もの方が「セクハラの基準を明確にする」を選択しています。次いで「社内に相談窓口を設ける」が151名、「加害者の処罰を明確にする」が140名と続きました。

セクハラの基準を明確にする

「セクハラの基準を明確にするです。何がセクハラに当たるのかが人それぞれで違うと思うのでそこをハッキリする必要があると思うからです。」(40代男性)

「セクハラの基準を明確にする。加害者側もセクハラだと気が付かないケースも多いと思うので、どこからがセクハラに当たるのかを明確にするべきだと思います。」(50代男性)

加害者の処罰を明確にする

「加害者の処罰を明確にする、です。罰が明確に提示されていればあえてする人も減ると思います。」(30代男性)

「加害者の処罰を明確にすることが重要だと思います。処罰を明文化することによって、無自覚に加害者になっていた人間が加害者にならないよう配慮する可能性があるためです。」(40代男性)

定期的に研修を実施する

「定期的な研修の実施…まず、皆が認識を合わせることがスタートであると思うから。」(60代以上男性)

「定期的に研修をさせ、加害者被害者とも認識を常に持つこと。」(40代男性)

被害者のプライバシーを守る

「被害者のプライバシーを守る。人の噂は止められないので、とにかく匿名性の確保が重要だと思う。」(20代男性)

「被害者のプライバシーを守ることは大事だと思う。結局訴えた方が損をする。被害にあう事になりがちなので被害者を如何に守れるかだと思います。」(40代男性)

社内に相談窓口を設ける

「相談窓口の設置。中立に聞いてくれる人がいないと、上司が取り合ってくれない人だと相談先がなくなるから。」(30代男性)

「相談ができるところがあって、一緒に考えてくれるところがあると楽だと思う。」(50代男性)

「NO」と言いやすい環境の構築

「「No」と言いやすい環境構築。声を上げることが一番難しいと思うので、相談できる人がいる環境が必要。」(20代男性)

「「NO」と言いやすい環境の構築。嫌なことは嫌だと言える環境が大切だと思います。」(40代男性)

告発者に不利益がないことを周知する

「告発者への不利益がなければ言い出しやすくなると思うから。」(30代男性)

「被害者が思わぬ反撃を浴びて加害者扱いされる事が一番良くないと私的に思ったので。」(50代男性)

その他

「社外の相談場所をおしえるなど、社内で揉み消されたりしない場所を教える。」(30代男性)

「セクハラ行為に対して社内調査や結果報告、改善提案、当事者のアフターフォローを行える第三機関の存在。外の機関が入ることで公平性を保つことができ、セクハラのあった企業を公表したりとリストを作る事で今後入社する人の目安になる他、会社も社内のセクハラ防止に対して適切に行動できるようになる。またセクハラ理由による退職、転職についてフォローしたり、次の勤務先から採用について詳細を聞かれた際に客観視点で説明ができる。」(40代男性)

会社に相談窓口がない場合でも、都道府県の「総合労働相談コーナー」があります。

総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

【調査詳細】
調査期間:2024年10月22日〜2024年10月29日
調査機関:クラウドワークス(実施元 オフィスギフト
調査方法:インターネットでのアンケート調査
調査対象:20代以上の就労経験のある男性
有効回答人数:300名

<Edit:編集部>

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