愛情ホルモン「オキシトシン」を増やすには?専門家が教える簡単な方法

[ 2025年2月10日 09:00 ]

愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンは、人とのつながりを感じたり、幸福感やリラックスを得たりするために欠かせないホルモンです。ストレス軽減や心身の健康維持にも効果があるとされ、現代のストレス社会において注目されています。

では、どうすればオキシトシンを増やすことができるのでしょうか? 子どもの成長発達にくわしい臨床心理士、公認心理師で一般社団法人マミリア代表理事の鎌田怜那さんが解説していきます。

愛情ホルモン「オキシトシン」とは

オキシトシンは、脳内の視床下部で作られ、下垂体後葉から分泌されるホルモンで、主に人間関係や絆を深める作用があることで知られています。

「愛情ホルモン」や「絆ホルモン」とも呼ばれ、人との触れ合いや信頼感を感じる状況で分泌が促進されます。

オキシトシンは以下のような作用が期待できるとされています。

1. 信頼感や共感性の向上

パートナー、家族、友人、ペットなどとのつながりを深める作用があります。また、出産や授乳の際に大量に分泌されることから、母子間の絆形成に重要な役割を果たします。

2. ストレス軽減

コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を抑制し、リラックス効果をもたらします。緊張状態や不安感を和らげる効果もあるため、心の安定をサポートします。

3. 幸福感や安心感を高める

オキシトシンは脳内の報酬系に働きかけ、幸福感を感じやすくします。社会的なつながりや利他的な行動によってさらに分泌が促進され、ポジティブな感情が増加します。

4. 身体の健康をサポート

血圧や心拍数を安定させる効果があります。さらに免疫機能を高め、体全体の健康維持に役立つとされています。過剰な食欲も抑えてくれます。

どんなときにオキシトシンは増える?

オキシトシンは、以下のような状況で分泌されることが知られています。

  • ハグや手をつなぐなどのスキンシップ
  • 感謝の言葉を伝える、もしくは伝えられる
  • ペットと触れ合う
  • 親しい人との楽しい会話
  • リラックスした状態 など

オキシトシンが分泌されるときは、「他者との親密なつながり」や「安心感、信頼感を生む行動」に関連しています。

「オキシトシン」、今すぐできる自分で増やす方法

「自分は人づきあいが少ないから」と思った人も安心してください。オキシトシンはセルフケアでも増やすことができます。

触れる

自分の体に触れたり、撫でたり。普段しない人にとっては、変な感じがするかもしれませんが、ボディローションを塗ったり、凝った部分を揉んだりというイメージです。

また、タオルやブランケット、パジャマやスリッパをふわふわ・もこもこのものにするものいいですね。お気に入りをご褒美として購入して、リラックスタイムのお供にしてはいかがでしょうか。

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周囲の人に感謝を伝える

たとえば店員、職場の人、近所の人に挨拶やお礼を言うことは、オキシトシン分泌にとても良い影響を与えます。

他人を助ける行動をする

ボランティア活動や、困っている人を助けるなどの行動は、オキシトシン分泌を促すと言われています。

深呼吸を行う

静かな場所でゆっくりと鼻から息を吸い、口からゆっくり吐き出します。ストレスホルモンを下げ、オキシトシンの分泌を促します。

好きな動物の動画を見る

ペットがいれば触れ合うことでオキシトシンが分泌されますが、いない場合は好きな動物の動画を見ることでもリラックス効果があり、間接的にオキシトシンが分泌されることがあります。

自分に優しい言葉をかける

「今日も頑張った」「大丈夫」など、自分に向けてポジティブな言葉をかけることで安心感が生まれ、オキシトシンが増えます。

今日あったイイコトを日記に書き、ポジティブな言葉で締めくくるのもよいでしょう。

温かい飲み物を飲む

温かい飲み物(ハーブティーやホットミルクなど)は、体がリラックスすることでオキシトシンを促します。寝る前に飲むとさらにリラックス効果が高まり、ぐっすり眠れる効果も期待できます。

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ポイントは、無理せずできる範囲で『人とのつながり』や『自分をいたわる行動』を取り入れること。

こんなことして意味あるの? というような小さな行動でも、積み重ねることで効果を実感できるでしょう。

専門家が実践する、自分でオキシトシンを増やす方法

私の場合は、エステや整体、美容院でケアをしてもらっています。

自分の体をケアしてもらいながら、労いの言葉をかけてもらったり、髪を触られシャンプーをしてもらい、頭をたくさん触ってもらったりしていると、とっても幸せです。

施術が終わると、少し気だるい感じで、ふわふわした心地……。ストレスを溜め込んでいたのが、癒されていることに気づかされます。

また、赤ちゃんとの触れ合いは最高です。動物の赤ちゃんも同じです。仕事で多くの赤ちゃんと会いますが、積極的に抱っこやマッサージをさせてもらっています。

もちろん、我が子との触れ合いも。子どもも疲れると「マッサージして〜」と甘えてくるので、そんな時は応えるようにしています。

こちらがするとお礼にマッサージをしてくれるので、そんな時はオキシトシンが大量に分泌されていることでしょう!

心地よく「触れ合う」がカギ

オキシトシンにおいては、「触れる」がもっともポイントになります。しかも、「自分にとって心地よい触れ方」です。

誰彼構わず触れ合えばいいわけではなく、誰かと触れ合うのであれば、相手との関係性も影響するでしょう。

また、‘触れられる’ことが苦手な人もいます。触れ合う対象は‘人’でなければならないわけではないので、自分に合った方法を試してみてください。

まずは、ふわふわ・もこもこのパジャマやブランケットに変えてみる……から試してみてはいかがでしょうか。

次:意外! 愛情ホルモンが増えすぎるがゆえのデメリットも

意外! 愛情ホルモンが増えすぎるがゆえのデメリットも

もう一つ、オキシトシンについて面白い話。実は、オキシトシンが増えすぎると困ったことが生じます。それは、オキシトシンで繋がった相手を守る気持ちが強まるが故に、攻撃性も高まってしまうということ。

子どもの存在で夫婦仲が悪くなったり、子どもを守るために学校などにクレームを言ったり……という具合に。彼氏や彼女ができると周囲との付き合いが悪くなるというのも同じです。

限られた対象との「閉じた関係」を強めてしまうとオキシトシンも困りものなので、広い関係性の中でオキシトシンの循環を作り出したいですね。

最近は男性の育児参加も進み、赤ちゃんのお世話を積極的にすることで男性もオキシトシンがどんどん分泌されています。先に述べたように、夫婦仲に悪影響が出ないように、共に子どもを育む仲間として、夫婦の触れ合いも大事にしたいものですね。

オキシトシンが減ってしまう環境や要因とは

オキシトシンが減少する状況や要因もあります。

たとえば慢性的なストレスや不安、孤独や社会的つながりの欠如が挙げられます。また、トラウマや心理的ショック、信頼を損なう出来事、睡眠不足、慢性疾患や炎症などの身体的な不調も影響します。

さらに、アルコールの過剰摂取や薬物乱用といった悪習慣もホルモンバランスを崩し、オキシトシンの分泌を妨げる可能性があります。

オキシトシンが不足すると、どんな症状が起きやすくなる?

オキシトシンが不足すると以下のような影響が出ることがあります。

  • 孤独感や不安感が強くなる
  • パートナーや家族への愛情を感じにくくなる
  • 性的満足感の低下
  • ストレス耐性が低くなる
  • 抑うつ的な気分が続く
  • 人間関係に消極的になる

このような状態が1か月以上続く場合、または耐えがたいつらさ、日常生活に支障をきたしていると感じたときは、医療機関や専門家に相談してください。

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海外ではオキシトシンの点鼻薬などが治療で使われることがあります。日本ではまだ認可されていませんが、もしかしたら日本においても投薬によるサポートが得られるようになるかもしれません。

しかし、これまで見てきたように、薬に頼らずともオキシトシンの分泌は促せるものです。今の生活スタイルを振り返り、健康を維持できる環境を整えましょう。

何より「自分を大事にすること」が一番の薬となります。頑張っている自分をなでなでしてあげてください。

監修者プロフィール

鎌田怜那(かまだ・れいな)

一般社団法人マミリア代表理事。臨床心理士、公認心理師。

【資格】
・臨床心理士
・公認心理師
・小学校教諭
・保育士
・ストレスチェック実施者
・アタッチメント・ベビーマッサージ インストラクター
・アタッチメント・マタニティヨガ、ベビーヨガ インストラクター
・アタッチメント・キッズジム インストラクター
・ドテラ アロマタッチテクニック
・食育大学認定初級調味料アドバイザー
・日本睡眠教育機構 睡眠推進員
・陰性感情トレーニングエグゼクティブトレーナー

【所属学会・協会】
・日本臨床心理士会
・日本公認心理師協会
・日本心理臨床学会
・日本アタッチメント育児協会

公式サイト https://mamilia.jp/

<Edit:MELOS編集部>

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