「ちむどんどん」最終回 SNS「#反省会」活況は視聴者の“朝ドラ愛”ゆえ テーマの「沖縄」にも粗

[ 2022年9月30日 08:16 ]

東京・渋谷のNHK社屋
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 女優の黒島結菜(25)がヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は9月30日、最終回(第125話)を迎え、完結した。ハッシュタグ「#ちむどんどん反省会」とともに、作品への疑問の声が最後までSNS上に噴出。異例の朝ドラとなった「ちむどんどん」の半年間を総括する。

 <※以下、ネタバレ有>

 朝ドラ通算106作目。タイトルは沖縄のことばで「チム(肝=心)が高鳴る様子」「胸がドキドキする」という意味。映画「パッチギ!」「フラガール」などで知られ、14年後期「マッサン」を担当した羽原大介氏がオリジナル脚本を執筆。今年、本土復帰50年を迎えた沖縄を舞台に、沖縄料理に夢を懸けるヒロイン・比嘉暢子(のぶこ)ら個性豊かな4兄妹、本土復帰からの歩みを描く。

 最終回は、1985年(昭和60年)11月24日、暢子(黒島)の新しい店「やんばるちむどんどん」は無事、開店初日を終えた。しかし、その日、歌子(上白石萌歌)が熱を出し、倒れてしまう。高熱はなかなか下がらず、暢子、優子(仲間由紀恵)、良子(川口春奈)たちは心を痛め、千葉から賢秀(竜星涼)も駆けつける。歌子の無事を祈る暢子は、賢秀と良子とともに“とある場所”へ向かう…という展開。

 暢子、賢秀、良子が海に向かって「おとーちゃーん!」「歌子を助けてちょうだーい!」と叫び、暢子が作った「フーチバージューシー」も食べた歌子は目を覚ました。

 ラスト10分になり、「202X(令和X年)」と一気に約40年が経過。「暢子の『やんばるちむどんどん』は大繁盛。今日も料理三昧の日々を送っています」(語りジョン・カビラ)など、それぞれが夢を叶えたが、“ナレ説明”によるもの。後日談としては、よくある手法だが、強引にまとめたフィナーレと受け取られても致し方あるまい。

 「東京編」(第6週、第26~30話、5月16~20日)に入ったあたりから、インターネット上にはストーリー展開や演出はもちろん、時代考証、劇伴、料理の見た目などへの指摘が続出。「#ちむどんどん反省会」が連日、活況を呈した。

 誹謗中傷や罵詈雑言は論外だが、作品に「ツッコミ」を入れながら楽しむ人もいれば、暴力沙汰の描写などに「不快感」を覚えて厳しい批判の声を上げる人も。「Yahoo!リアルタイム検索」をかけたワードには「ポジティブ/ネガティブの感情」の割合が表示されるが、総合テレビの本放送終了時(午前8時15分)の「ちむどんどん」というワードは8月15日以降、ネガティブが71~92%で推移(8月は81~92%、9月は71~89%)。否定的な意見の程度の差こそあれ、今や海外ドラマにも触れて目の肥えた視聴者に今作が受け入れられたとは、SNS上においては言い難い。

 今作への疑問・ツッコミは既に語り尽くされた感もあるが、今回はテーマの「沖縄」と「沖縄料理」に絞って手短に記したい。

 第75話(7月22日)は1978年(昭和53年)8月。先祖をあの世へ送る沖縄のお盆の最も重要な日「ウークイ」の夜、4兄妹はは母・優子から亡き父・賢三(大森南朋)との馴れ初めなど、秘められた過去を聞く。賢秀は一夜明け、暢子に「何でか無性に働きたくなって」と言い残し、どこかへ旅立った。

 今度こそ改心したと思われた賢秀だが、第19週(第91~95話、8月15~19日)で“ねずみ講騒動”。勝負の「ウークイ週」(第15週「ウークイの夜」、第71~75話、7月18~22日)が台無しになった。上記のネガティブの割合は第92話(8月16日)、第93話(8月17日)と92%に達した。

 沖縄料理(野菜)に関しては、料理名(野菜名)こそ字幕表示されるものの、その料理(野菜)がどのようなもの(味、食文化など)なのか、結局、分からないことが度々あった。

 例えば、第118話(9月21日)の比嘉家宴会。暢子は「チキナーチャーハン」「ジーマーミ豆腐」「オオタニワタリの天ぷら」「タマンの唐揚げ(サクナ、イーチョーバーのせ)」「ウジラ豆腐」を作ったが、SNS上にも「今日も今日とて料理の説明も作る過程も何も見せてもらえなかったから、どんな香りだか、どんな味だか何がなんだかサッパリ(悲)」「ジーマーミ豆腐はかろうじて知ってる。が、チキナーチャーハンのチキナーて何?オオタニワタリはどんな味?タマンの唐揚げのタマンて?どっちがサクナ、どっちがイーチョーバー?ウジラ豆腐?(ウジラ豆腐で暢子が説明した)ササゲの食感最高?ササゲとは?」などの声が上がった。

 愛(飯豊まりえ)の旅立ちや矢作(井之脇海)の復活劇(犯罪が絡まなければ、なお)、津嘉山正種や草刈正雄ら、胸を打つ単体エピソードやキャストの熱演はあった。コメディーパートは好みが分かれるが、重子(鈴木保奈美)の子どもの名前・店名勘違い、賢秀の漢字間違い「部にして返す」(1回目)など、笑いを誘う場面もあった。

 しかし、大半の視聴者の気持ちは最後までつかみ切れず。何かと粗が目につく作りは「浅ドラ」などと揶揄されてしまった。

 「朝ドラ」は1961年(昭和36年)にスタート。低迷期はあったものの、今や最も愛される地上波ドラマ枠の1つ。配信全盛の時代となり、出来や評判が芳しくなくても、今作の平均世帯視聴率は15%超(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークしている。愛すべきドラマに、つい一言、言いたくなる。「#ちむどんどん反省会」の盛り上がりは、視聴者の“朝ドラ愛”の表れだった。

 もちろん、毎作品が「ある職業を目指すヒロイン」「偉業を成し遂げる女性の一代記」の朝ドラ王道パターンだと、つまらない。チャレンジや実験は歓迎される。ただ、それも、制作側と視聴者が60年、100作以上にわたって築き上げた“朝ドラ観”から大きく逸脱し、信頼関係を損なうようなものならば、今回のような事態を招く。伝統を守りつつ、オリジナリティーを発揮した作品を生み出し、朝ドラ史を紡ぐ難しさを痛感した。

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