光石研 天職との出会いは“運命”友人が応募 転機は35歳の青山組

[ 2017年1月27日 10:00 ]

「バイプレイヤーズ」名脇役インタビュー(3)光石研(下)

俳優になった原点と転機を語る光石研(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会
Photo By 提供写真

 遠藤憲一(55)大杉漣(65)田口トモロヲ(59)寺島進(53)松重豊(53)=アイウエオ順=とともに、日本映画界に不可欠な名脇役6人による夢の共演が実現したテレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」(金曜深夜0・12)に名を連ねる俳優の光石研(55)。高校在学中の1978年、映画「博多っ子純情」(監督曽根中生)で主演デビューしてから40年弱。変幻自在の演技は、多岐にわたる作品に深みを与えてきた。その原点、転機を聞いた。

 出演映画は150本以上。「ハッシュ!」(監督橋口亮輔、2002年)の主人公(田辺誠一)の兄役、「紀子の食卓」(監督園子温、06年)の姉・紀子(吹石一恵)妹・ユカ(吉高由里子)の父親役など、印象に残るキャラクターは枚挙にいとまがない。テレビドラマは15年10月クールのフジテレビ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」で悪女・橘カラ(菜々緒)に翻弄されるグラフィックデザイナー役が記憶に新しい。

 初出演作は、長谷川法世氏(71)の人気漫画を映画化した青春群像劇の傑作「博多っ子純情」。高校在学中だった光石は主人公の郷六平を演じた。「男の子3人の話だったので、当時よく遊んでいた3人組の1人が『この3人で演じられたら、おもしろいんじゃないか』とオーディションに応募してくれたんです。主役の3人以外にも同級生役も募集があって、同級生役でも『日当は1日1万円、撮影は5〜6日』。『5万円ももらえる。これはいい』と応募して。そうしたら、受かっちゃったんですね。主役は本当にたまたまです」。友人のおかげによるデビューだった。

 北九州市出身。役者の道に進むとは考えたこともなく「これ(博多っ子純情)がなかったら、僕はたぶん、いや絶対この世界にいないと思います。当時の夢?今の子みたいにしっかりしていなかったですから。とりあえず大学に行って、ぐらいは思っていたんですかね。実家は出たかったので、どこか都市には出ていたと思うんですが」と振り返った。

 「博多っ子純情」の撮影は刺激にあふれ「田舎の男の子にとっては、本当にカルチャーショック。あまりにもおもしろすぎて『この世界に行きたい』と思ったんです。大の大人たちがワンシーン、ワンシーン撮るために一生懸命。たかがコップの水を撮るのに一生懸命だったり、誰か転ぶのを一生懸命ケアしたり。いい大人たちが真剣に“何とかごっこ”をやるように、映画を作っている印象。作るってことが楽しかったんですね。自分の演技どうのこうのじゃなく、映画作りそのものが楽しく、チームの中に入りたいと思ったんです。だからスタッフでも全然よかったんですが、たまたま俳優部として入っちゃったから、そっちの方が楽かなと思って」とイタズラっぽく笑った。

 俳優としての転機は、同郷の“盟友”青山真治監督(52)の劇場デビュー作品「Helpless」(1996年)。「EUREKA」「サッド ヴァケイション」と続く“北九州サーガ”の第1作。光石は仮出所したヤクザで、親分への復讐に燃える松村安男を演じた。主演の浅野忠信(43)が高校生・白石健次を演じ、安男と再会して物語は動き出す。

 「それまでと全く違う役を頂いて。僕の生まれ育った北九州が舞台で、方言も使えて。青山さんと同郷というのもありましたし、青山組から頂いたものは大きかった気がします。もう1回、リスタートじゃないですが、原点に戻ったような。『博多っ子純情』の時に味わったような感じだったんですかね。純粋に映画作りがおもしろい。それプラス、大人になっていましたから、いっぱい学んだ気がします。ものすごくいい巡り合わせだったと思っています。この辺ぐらいからですかね、演技がおもしろくなってきたというか、プロを意識し始めたというか。この時もまだ30代半ばでしたから、全然ですが」

 今後については「役柄に関しては僕が決められることじゃないですが、とにかく1日でも長く、現役で俳優をやりたいですね。今回共演の大杉さんが僕より10歳年上。それでも現役で突っ走っていらっしゃる後ろ姿を見ると、そこを追い掛けていきたいと思います」。そう言わしめる役者の魅力は「みんなで物作りをしている一端を俳優部として担いでいるっていうのが楽しいですね」。俳優じゃなかったら?と聞くと「何か特技があったわけでもないですし、勉強ができたわけでないですし。何になっていたか、サッパリ分からないです。俳優になっていなかったらと思うと、本当に恐ろしいし、怖いです。だから、出会って本当によかったと思っています」と実感がこもった。名バイプレイヤーになるのも必然だったのかもしれない。

続きを表示

2017年1月27日のニュース