井上尚弥　来年4月にも次戦!　前人未到2階級4冠目指す「すぐに世界挑戦できるのならしたい」

4団体統一から一夜明け、ベルトを手に笑顔を見せる井上尚弥（撮影・会津　智海）
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　プロボクシング史上初めてアジア人でバンタム級の世界4団体統一王者となった井上尚弥（29＝大橋）が一夜明けた14日、横浜市内の所属ジムで会見した。来年の転向を予定するスーパーバンタム級では調整試合を挟むことなく即4階級制覇への挑戦を希望。将来的には同級でも4団体王座を統一し、史上初の2階級4冠を目指す意向を明らかにした。

　会見を開くたびにWBA、WBC、IBFの3本が飾られていたベルトに、WBOの1本が加わった。「4本そろうと、やってきた重みを実感する」。井上は傷一つない顔で話した。前夜は1万5000人が詰めかけた有明アリーナで、ポール・バトラー（英国）に11回KO勝ち。スーパーフライ級王者時代には有明コロシアムを満員にできなかったと自ら切り出し、「最高の夜だった。あの景色を見続けられるように頑張りたい」と誓った。

　試合後、スーパーバンタム級で4階級制覇を目指すと宣言。同級の2団体統一王者のフルトン（米国）とアフマダリエフ（ウズベキスタン）はそれぞれ試合計画があり、大橋ジムの大橋秀行会長は次戦を「4月か5月」としながらも、階級については言及を避けた。だが、井上は「すぐに世界挑戦できるのならしたい。テストマッチはいらないと思う」と転向初戦での世界挑戦を希望。新たな階級でも4団体統一を目指すかと問われると「しばらくスーパーバンタムでやると思うので、また統一を目指していく方向になると思う」と答えた。

　元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナー（大橋）の指導で、昨年11月から新階級での戦いに必要なフィジカル面を強化中。「戦い方を変えていく必要はあるが、（自分の）引き出しの中でチョイスできる。デカい選手に体力ゴリゴリ勝負を挑むつもりはない」と方針を口にし、「本当に気の抜けない、スリリングな戦いになってくる」と未体験の激戦をむしろ歓迎した。統一戦2試合を戦った今年の漢字を聞かれ「自分も“戦”ですね。戦いの一年だった」と振り返った井上。「自分のゴールは年齢やパフォーマンスの低下で考えているので、何階級制覇とか何団体統一とかでの引退はない。全てが通過点になる」というボクシング人生の新章へ、年明けからジムワークを再開する。（中出　健太郎）

　◇スーパーバンタム級の現状　WBAとIBFのムロジョン・アフマダリエフ、WBCとWBOのスティーブン・フルトンと統一王者が2人いる。左拳骨折のアフマダリエフは離脱中で、IBFがタパレス（フィリピン）との指名試合を指示。フルトンはフィゲロア（米国）との再戦がWBCフェザー級暫定王者決定戦として承認されており、勝てばフェザー級転向が濃厚だ。王座を返上すれば井上は王座決定戦出場の可能性がある。

　≪リングマガジンが統一ベルト贈呈≫米国で最も権威ある専門誌リングマガジンから井上に“4団体統一ベルト”が贈られることになった。同誌は独自に各階級の世界王者を認定してベルトを与えているが、統一ベルト贈呈は極めて異例。9月のロス合宿でフィッシャー編集長が約束したという。6月に同誌のパウンド・フォー・パウンド（全階級を通じての最強ランキング）で初めて1位に選出された井上は「めっちゃうれしいですね」と話した。また、4団体王座統一を記念したフレーム切手セット（6050円）の発売も発表された。試合の写真を使用した受注生産品で、郵便局やローソンで23日から申し込みを受け付ける。

　≪海外メディアも称賛≫海外メディアも井上の4団体王座統一を称賛した。英BBCはバトラーの消極的な戦いぶりを批判しながら「モンスターがこの50年で初のバンタム級統一王者に」と報道。英サン紙は「またも残忍なKOでバトラーの希望を打ち砕いた」と伝えた。米スポーツ専門局ESPNは「井上は122ポンドでリアルファイトを見つけられるか？」との見出しでスーパーバンタム級の現状を解説。「126ポンド（フェザー級）でもタイトルを獲得する可能性が高い」とした。