池松壮亮 「金田一耕助」特番で愉快な魅力

[ 2021年3月5日 11:15 ]

NHK・BSプレミアム「池松壮亮×金田一耕助1」で話す池松壮亮(C)NHK 
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 【牧 元一の孤人焦点】斬新な番組が誕生した。3本のドラマの3人の監督、主演俳優が一堂に会し、反省や秘話を語り合う。NHK・BSプレミアムの特番「池松壮亮×金田一耕助1」(6日後11・30)だ。

 監督が自作の反省を番組で公表する機会はまずない。しかも、本来ならばライバル関係にある他の監督が同席し、主演俳優もいる状況。実存するはずのない異空間がそこに広がった印象だ。

 出演は俳優の池松壮亮、佐藤佐吉監督、宇野丈良監督、渋江修平監督、淵邉恵美プロデューサー。2016年11月と20年1、2月に同局で放送された「シリーズ横溝正史短編集」にかかわる面々だ。

 淵邉氏は「このシリーズを再放送するに当たり、何かオマケをつけたいと思った。以前からSNSで『制作の裏話を聞きたい』という声があったので、こういう形式にした」と説明。その上で「3人の監督はふだんから仲が良い。お互いにリスペクトし合っていて、それぞれの作品に関して聞きたいことがあった。池松さんも、1人で積極的に話すタイプではないので、みんながいた方が話しやすいだろうと考えた」と明かす。

 シリーズでは、横溝正史の各短編を、セリフを一言一句変えずに映像化。それぞれの監督が自らの個性を発揮し、かつてない金田一耕助像を築き上げた。

 今回の収録で、佐藤監督は自ら演出した「殺人鬼」に関して「被害者と犯人、誰だか分かる?」と質問。池松は「ちょっと分からないかも。見返して、面白いと思ったけど、話は入って来ないかもしれない」と率直な答えを返した。ミステリーの結末が分かりにくいのではないかという、一種の反省。それを当事者たちの口から聞けるところが興味深い。楽屋での関係者たちの本音トークを小耳に挟んだような、お得感がある。

 この特番で、池松の役者としてのたたずまいが良く分かる。物静かに思ったことを口にし、3人の監督と渡り合って、意外に雄弁な印象。淵邉氏は「池松さんはどちらかと言うと、制作側、チームの一員というタイプの人。まだ30歳だが、落ち着いていて、若年寄みたいな面もある。ふだんから、この番組で話しているような感じでいろんなことを考えている」と、人間としての面白みを指摘する。

 出演者の帽子に傘の柄のような飾りがついているが、それは池松が発案したもの。コロナ禍での収録で、ソーシャルディスタンスをとる思いからだというが、淵邉氏は「現場で、はんだごてでつけた。重すぎて、収録の途中で首が痛くなった」と笑った。

 この特番は池松の未知の愉快な魅力を発見する番組でもある。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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