ラストイヤーも貫く!藤沢和師の流儀 14年天皇賞・秋で体現した「しつけ」とは…
藤沢和雄調教師インタビュー(1)

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現役最多のJRA通算1500勝を達成した“競馬のレジェンド”藤沢和雄調教師(69)の引退まで1年を切った。来年2月末で70歳定年を迎える名伯楽の胸に去来する思いとは…。タイキシャトル、シンボリクリスエスなどの名馬でG1を席巻し、英国仕込みのスタイルで中央競馬に一大旋風を巻き起こした33年間。知られざる逸話や、後継へ置き手紙代わりに伝えておきたい競馬の奥義をスポニチ本紙に語った。
――来年2月28日の70歳定年まで364日…。ついにカウントダウンが始まった。
「ラスト1年だと、みんなにあおられるけど、最後だからって過激なことはしませんよ。いつも通り1~3月の出走回数は多くない。毎年、そういうリズムでしか使ってこなかったから。春の東京から本格的に競馬していきます。2月でも未勝利だった年に“藤沢厩舎、大丈夫ですか?”なんて心配してくれる人もいたけど、2月で終わるわけじゃない。最後の1年もリズムを変えずに2歳馬も入れて入念にやってますよ」
――17年にはレイデオロでダービーも勝った。やり残したことはあるのだろうか。
「もちろん、たくさんあるけど、そんなこと言い出したら切りがない」
――昨年はJRA通算1500勝も達成。JRA・G1通算32勝…。
「おかげさまで、たくさん勝たせてもらいました。ただ、G1を勝つのはあくまでも馬の力。持って生まれた才能だから。調教でG1を勝てるわけじゃない。それに今の時代のサラブレッドは馬車馬みたいに余計な負荷をかけてビシバシ叩かなくても走っちゃう。鉄ゲタ履かせた姿三四郎みたいな時代遅れの稽古はいらないんです。強くしようなんて思って鍛えちゃうと、ろくなことにはならない」
――14年天皇賞・秋の優勝パネルが厩舎に飾られている。フレームに納まっているのはスピルバーグの手綱を誇らしげに引く山本英俊オーナー。種牡馬としての価値が高まる2000メートルのタイトルを重視する藤沢和師は秋の天皇賞を6勝したが、この年の優勝には特別な思いがあった。
「天皇賞を勝てたのはスピルバーグ自身の能力。でも、馬主さんが引っ張れるかはしつけの問題。厩舎が問われる。それまで山本オーナーは馬を引いたことがなかった。だけど、高い馬をたくさん買って応援してくれた。あの人の馬が勝った時にあの人が引いて歩けるように調教してきたつもりだし、勝った後に引いて歩く姿はとても格好良かった。今でも誇りに思っている」
――しつけは競走馬に限らず動物を扱う上で最も大切…。
「ドッグトレーナーやキャットトレーナーのしつけは凄い。例えば、ドッグショーで犬が鳴いたり、吠えたり、人の言うことを聞かないのは失格ですよ。我々の生半可な調教ではドッグショーで門前払いだろうね。入場禁止になっちゃう。そういう危機意識、プライドを持って馬を取り扱う人たちもやらなきゃ駄目」
――馬のしつけとは…。
「もちろん、怒ったり、叱りつけるだけでは駄目。伸び伸びした子を育てなきゃいけない。馬は元気がいいから押さえつけても駄目。グランアレグリアみたいに年齢とともに穏やかになることも考えて調教していかないと。これは若い調教師にも伝えておきたい」
――最近、藤沢和師は馬場の入り口で暴れる馬に手を焼く他厩舎のスタッフにも声を掛けている。
「全休日明けは馬が跳ね回って当たり前。おとなしかったら病馬だぞ…俺にそんなこと言われたら、厩務員さんは怒りたくても怒れない(笑い)」
――JRA通算1000勝の記念碑には「Happy People make Happy Horse」と記されている。
「英国の厩舎で働いていた時、アイルランド出身のジョン・マギーという厩務員が“そんなに難しい顔しないで。馬をやるときはニコニコしてやるもんだよ”と私に言った。いい言葉だよね。馬も毎日、馬場でストレスをかけられて大変なんだ。だから厩舎にいる時ぐらいは癒やしてやらなきゃ。Happy…とはそういう意味。今でも心掛けている。イライラしながら馬を取り扱っちゃいかん。英国時代にそう習った。朝一番は馬をつかまえて無言でモグシ(簡易頭絡)をかけるんじゃなくて、“おはよう。元気だったかい?”って馬に話し掛けることから始まる。大切なことだと思っています。昔話ばかりさせるなよ(笑い)」
※(2)に続く
◆藤沢 和雄(ふじさわ・かずお)1951年(昭26)9月22日生まれ、北海道苫小牧市出身の69歳。実家は78年秋の天皇賞馬テンメイなどを生産した藤沢牧場。青藍牧場(登別市)勤務を経て、73年から4年間、英国ブリチャード・ゴードン厩舎で厩務員。77年に帰国し、菊池一雄、野平祐二厩舎の調教助手を務めた後、87年、調教師免許取得。88年、美浦トレセンで厩舎開業。JRAリーディング(中央競馬年間勝利数1位)に14回輝いた。JRA通算1528勝(うち重賞123勝、G1・32勝)。趣味はゴルフ、鳩の生産、飼育など。
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