井上尚弥「歴史的な試合」でも「通過点」 アジア人初2階級4団体統一へ26日VSタパレス
WBC&WBO&WBA&IBF世界スーパーバンタム級王座統一戦 ( 2023年12月26日 有明アリーナ )

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WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥とWBA&IBF世界同級王者マーロン・タパレスの記者会見が24日、横浜市内のホテルで行われた。26日の4団体王座統一戦を前に約5カ月ぶりに対面。史上2人目の2階級4団体王座統一が懸かる井上は「歴史的な試合」と位置づけ、アジア人初の偉業達成へ気持ちを高ぶらせた。
白の帽子に白のTシャツ姿。2日後に迫った決戦に向け、マスクからのぞく井上の視線は鋭さが増していた。史上2人目の4団体王座統一が懸かる一戦。4本のベルトを前にした井上は「歴史的な試合になると思っている。自分が2階級4団体統一する姿をしっかり見届けてほしい」と言い切った。
タパレスとは、7月25日のフルトン戦後のリング上以来、約5カ月ぶりの再会だった。フォトセッション後、笑顔で右手を差し出し健闘を誓い合った井上は「しっかりとトレーニングを積んで仕上げてきたなというイメージ」と印象を語った。
左構えのタパレス戦に向けて、「苦手ではない」と話すサウスポー対策も入念に行った。メキシコ人パートナーとのスパーリングは116ラウンドを数え、目にあざをつくるほどの壮絶な練習で仕上げてきた。20日の公開練習時にタパレスから「勝つ可能性は2000%」と挑発されたことには「そのくらいの自信がなければ面白い試合にならないと思う。自分としては、そのくらいの意気込みで来てもらった方がいい」とにやりと笑い余裕を漂わせた。
世界的プロモーターも大一番が待ち切れない様子。会見に同席した米興行大手トップランク社のプロモーター、ボブ・アラム氏(92)は「ムハマド・アリをはじめ、シュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラー、マニー・パッキャオら素晴らしい選手をプロモートしてきたが、井上はその選手たちにも劣らぬスーパースター。誰よりも素晴らしい選手だ」と歴史的名選手に肩を並べる存在であることを強調した。
井上は「自分のボクシングキャリアを考えれば、まだまだここは通過点」とも付け加えた。「どんな展開になってもしっかりと勝ちを手にしたい。その中でチャンスがきたらそこを逃さないようにしたい」。歴史的な一夜にふさわしいのは豪快なKO勝利だ。
≪尚弥戦サウジ&米国開催も≫ボブ・アラム氏は将来的な井上戦のサウジアラビア開催プランを明かした。潤沢なオイルマネーを武器に来年2月にはヘビー級4団体王座統一戦も同国で開催することが決定。今年10月に同国を訪れたというアラム氏は、現地の関係者から「“井上の試合をサウジアラビアでできないか”と言われた。会場規模などは分からないが、金額的には大きくなると思う」と明かした上で「それは(井上の所属する)大橋会長が決めること」と話した。
また米国開催の可能性についても言及し「大谷や山本ら、日本の野球選手が米国でも非常に注目を浴びている。(井上戦は)人気の出るイベントになるだろう」と話した。
◇タパレス戦に懸かる井上の記録
☆2階級4団体王座統一 テレンス・クロフォード(米国)に続く2人目。クロフォードは15年4月のWBOスーパーライト級王座獲得に始まり、今年7月にウエルター級3団体統一王者エロール・スペンスを下し8年3カ月で達成。井上は18年5月のWBAバンタム級王座獲得から、次戦で勝てば5年7カ月で最速での達成。2階級目の最初の王座獲得から数えると、クロフォードは5年1カ月、井上はわずか5カ月で達成。
☆世界戦最多勝利 井上が4団体王座統一戦に勝利すれば「21」で井岡に並ぶ日本人最多。ただ、井岡は大みそかに防衛に成功すれば再びトップの22勝目となる。
☆世界ベルト10個目 タパレスに勝利すればWBA&IBFスーパーバンタム級のベルトを2個手にし、節目の10個目(WBCライトフライ級、WBOスーパーフライ級、バンタム&スーパーバンタム級4団体)となる。日本人の次点は井岡の6個。
≪「歴史的勝利」タパレス自信≫2団体王者タパレスは「非常にワクワクしている。とにかくいい試合をし、同時に勝ちたいと思っている」と意気込みを示した。体重もあと約1キロまで落ちていると明言し「試合に向けて準備は万全だ。ディフェンス面でも準備しているから問題はない」。フィリピン初の4団体統一王者を目指すサウスポーは「試合を楽しみにしてください。私が勝てば歴史的な勝利になる」と自信を示した。
【レジェンドアラカルト】◇ムハマド・アリ(米国) 64年に22歳でWBA・WBC世界ヘビー級統一王者に。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」華麗なスタイルで、ヘビー級で19度防衛と「最強」の呼び声高い。56勝(37KO)5敗。
◇シュガー・レイ・レナード(米国) ウエルターからライトヘビーまで世界5階級制覇王者。「超特急」と呼ばれるスピードが武器。80年代にハグラーらと「黄金の中量級」時代を築く。36勝(26KO)3敗1分け。
◇マービン・ハグラー(米国) 80年代にミドル級で最強を誇った。同級の世界3団体統一王者。「ミスター・パーフェクト」と呼ばれた。62勝(52KO)3敗2分け。
◇マニー・パッキャオ(フィリピン) 貧しい農家から成り上がり、フライ級からスーパーウエルター級まで世界6階級制覇した2000年代のスター。62勝(39KO)8敗2分け。